得意じゃないと言うよりは苦手だったと言うべきか
自分には才能もチャンスも無いと諦めの日々だった
そんな俺だけど二十歳の頃に
奇跡的に魚がつれそうになった事がある
でもその魚は俺の事は素通りして
何処か遠くの海に行ってしまった
自分のヘタれさを呪った事もある
生きる価値も無い人間と落ち込んだりもした
表面上の優しさはただ臆病なだけだとも気付いた
それでもいつか報われると懸命に生きてきた
二十代半ばでその日はやってきた
自分には決して手に届かない程の美しい魚
俺は残りの人生を賭けても良いとさえ思えた
俺の努力は報われたと神に感謝さえした
それから数年
あの魚は今も美しいままだ
でも、俺のような人間に釣られてしまい
こんな狭い水槽に閉じ込められて
美しい魚は元気が無くなってしまった
水が悪かったのかも知れない
一緒の水槽にいた魚が悪かったかも知れない
俺がちゃんとケアできなかったかも知れない
俺が愛してやまない美しい魚
俺の人生を照らしてくれた輝く魚
そんな大切な大切な人生の宝物を
俺は守ってあげられなかった
こんな男の側よりももっと自由な海へ
濁った水槽なんかじゃなく澄んだ広い海へ
俺はいま悩んでいる
俺の側に幸せが無いのなら
幸せを願って海へ帰すべきなのかと
貴女を幸せにしたい気持ちは今も変わらない
止まらないこの涙が俺に教えてくれる
今も変わらず愛していると
俺はいま悩んでいる
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